【短】Another Platonic

葵を初めて知ったのは、

高校一年の、2学期だ。




「すんませーん。
おーい。誰か、おらん~?」


旧校舎を見上げ、バカでかい声を張り上げる俺に、


「時間のムダやって。
昼休けいの美術室なんか、誰もいるわけないやん」


と、友人のウッチーはあきれ顔。



「ん~、でも面倒くさいねん。
4階まで上がるの」


「んじゃ、勝手にすれば?」


「そうする~」


教室に戻るウッチーに手を振り、

俺はもう一度、旧校舎を見上げた。


「おーい。誰かおらん~?」



いったい何をしてたのか、って?


授業で使うスケッチブックをなくして探してたんだ。



たぶん、午前中の授業で美術室に置き忘れてきたんやけど

探しに行こうにも美術室は旧校舎の4階。

薄暗い階段をせっせと上るのは面倒だった。



というのは言い訳で。



ほんとは、オバケが出るって噂の旧校舎に入りたくなかったんだな。



で、もしも誰か美術室にいるなら、ちょっとだけ探してほしいな~。なんて。



はい。


俺、実はめっちゃ怖がりだったんです。



< 2 / 87 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop