【短】Another Platonic
「出かけるんか?」
「あ…あの、友達の、家に……」
我ながら苦しい言い訳。
顔がひきつってうまく話せない。
どう見ても怪しすぎたやろう。
でも父さんはそんな俺を問い詰めず、そばにしゃがんで、微笑んだ。
「そうか。気を付けて行ってこいよ」
「………」
「でもこれは必要ないから、置いていきなさい」
俺のポケットからカッターを抜き、父さんは何事もなかったかのように立ち上がる。
……俺の様子がおかしいこと
俺が、思いつめてたこと
気づいてたんや――
「父さんっ」
寝室の方に戻っていく後ろ姿を、とっさに呼び止めた。
「ごめん、俺……」
「なんであやまるねん。友達んちに遊びに行くだけやろ?」
穏やかな笑顔に見下ろされ、息をのんだ。
「卓巳。俺は今日までお前を見てきたんやから、どんなときでも、お前の良心を信じてるよ」
俺は廊下に突っ伏して、涙を流した。
声を殺し、肩を震わせながら。