睡恋─彩國演武─





「蛇神?」


千霧は瞳を大きくして、由良の顔を覗き込んだ。


「ええ。『蛇神教』なんです。大きくて、白い蛇の神なんだそうで……」


このぐらい、と彼は手を広げてみせる。

……その説明は少しわかりづらい。


「脩蛇といいます」


「しゅうだ……?」


王が崇拝するのが蛇だとしたら、彼が蛇憑きだというのも説明がつく。

脩蛇という異形が白樹にとり憑き、この国全体の禍となっているのだと。

脩蛇、という言葉に反応し、月魂が光を帯びた。


「……月読、何か言いたいことでもあるのか?」


そっと鞘に触れると、心に言葉が降ってくる。


『……あるな、言いたいことなら沢山』


「聞かせて」


『そなたは知らないのか?脩蛇というのは、青龍と大喧嘩して負けた憐れな異形のことだぞ』

千霧が目を丸くすると、月読は続けた。

『だが奴は邪神。そもそも、奴が人を喰らって、青城の邑を喰い尽くしたのが青龍の逆鱗に触れたんだがな』


千霧は絶句した。

月読は嘘を言わない。

それ故、今の話が全て真実なのは明確だった。


『そなたが生まれるより昔の話だ……。先代の龍の頃。白虎も知っているんじゃないか?』


(呉羽も、知っている──…)


それなら、呉羽はこの状況をどう思っているのか。

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