睡恋─彩國演武─

〔弐〕灯火、ふたつ



〔弐〕灯火、ふたつ



庭に咲いた黒い曼珠沙華が、闇を一層濃くしている。


「蒐(シュウ)、何処に行っていた?──あぁ、星麟か。甘い香りがする」


薄暗い部屋の中に、僅かながら自分以外の気配がする。

薄目を開けて、微量の光を頼りにそちらを見た。


「──お前も眠れ。明日は早いからな」


「……御意」


再び瞼を閉じると、気配が消えた。

行き先はわかる気がする。


「──あの、莫迦」


闇は、声を飲み込むほどに色濃くなっていた。






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