睡恋─彩國演武─
しばらくそうしていた紫劉だったが、呉羽に千霧を任せると、王宮内の混乱を鎮めるために中へ入っていった。
その後、沙羅が駆けつけ、呉羽は千霧を自室へ運んだ。
寝台に寝かし傷を診ると、幸い深くは無かった。
出血が多いので心配していた呉羽だったが、軽傷と聞いて胸を撫で下ろす。
「一体、何があったんですか?紫蓮さまはお倒れになるし、千霧さままでこんなお怪我を……」
肩に包帯を巻きながら、沙羅は不安げな表情を浮かべた。
「最近の千霧さまはおかしいですわ。一体、この国に何が起こっているんですか?」
沙羅は重たげな睫毛を震わせて、千霧を見つめていた。
呉羽は何も答えず、黙って千霧を見つめていた。
沙羅もそれは最初から予想していたのか、それ以上はなにも問おうとしなかった。