ひめごと。
谷嶋のその言葉はまるで、春菊が重労働をしたかのような口ぶりだった。
しかし、昨日は谷嶋のお母上に会っただけで、別段、何をするわけでもない。ましてや、春菊は身体が弱い。いくら以前よりは動けるようになったとはいえ、遠出など出来るはずもないのだ。
意味が分からず、ぽかんと口を開けた。
間の抜けた顔をしている春菊を見下ろし、谷嶋はいまだ眉尻を下げ、心配そうにしていた。
「何かあった? 夢の中のことでもいいから言ってごらん? 少しは楽になるから」
それはとても優しい声。
その声に、言葉に、仕草に……思わず寄りかかりたくなってしまう。
でも、それはできない。いったい誰が、『匡也さんに好きだと言われた夢を見た』などと言うことができるだろうか。身分違いも甚(はなは)だしい。
だから春菊は首を振り、なんでもないと、そう答えた。