君が教えてくれた事
「宝来くん、今から休憩入って!」
店長に言われて、俺は持ち場を離れた。
そして、気付いた。
賄いを食べるには、注文をしないといけないという事に。
周りを見渡すと、みんなが、俺の存在を消している。
まぁ当たり前だよな。
一食くらい、食わなくても、全然大丈夫だ。
次からは、何か買って入ろう。
俺はそのまま、ホールを抜けて、バックルームに入った。
「お疲れ様!」
リカも今日は、オープン・ラストだったのか、俺より先にバックルームで休憩をしていた。
俺は無言のまま、リカの向かいに座った。
「リカちゃん、お待たせ〜!」
野上がリカの料理を運んでくると、リカは笑顔でお礼を言う。
料理を目の前にしても、リカはいっこうに食べようとしない。
もしかしたら、俺の料理が出来るのを、待ってくれているのかもしれない・・・
言ってあげないと・・・
そう思っても、俺はリカに話しかける事が出来なかった。
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