空のギター
「みんな、聞いてくれるかな?俺達は今、文化祭に向けて新技の特訓してるんだ。だから、もう少し配慮してくれると嬉しいな。
それから、これは個人的なことになるんだけど……俺は今QuintetのKazamiじゃなくて、普通のダンス部所属の高校生だから。出来れば特別扱いしないで欲しいな、って思う。みんなにも、部活のメンバーにも。」



 さっきまでやかましかったファン達は、彼の一言で夜の海のように静かになる。これには部員達も驚いた。部活中は普通の高校生として接していたつもりだが、彼の芸能人としてのカリスマ性を改めて実感させられたのだった。



「えっと、別に応援しないでってことじゃなくて、むしろすっごく応援して欲しいんだけど!
何て言うか……あんまり学校に来られない分、登校した日は思いっきり学校満喫したいんだ。それは俺だけじゃなくて、他のQuintetのメンバーも同じだと思うんだよね!」



 ニコリと笑んだ風巳のお願いに、騒いでいた女子達は口々に「分かりました」、「うるさくしてごめんね」などの了解の言葉を返してくれた。風巳はホッとして、仲間達に向き直る。



「……みんな!部活再開しようぜ!!」
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