空のギター
「そういえばこの間、ウチに見覚えのない合格通知が……お前の仕業かよ。」



 溜め息をつきながら言う頼星。「あぁ、ごめんごめん」と棒読みで言った雪那に、「絶対本気で謝ってねぇだろ……」と今度は呆れた息を吐いた。だが、その表情が徐々に優しくなっていく。



「まぁ……俺らがデビューできるチャンスだし、良いんじゃねぇの?」



 微かに笑みを浮かべた頼星につられて、雪那も笑う。自分達が憧れている世界への扉が現れた。飛び込んでいけるかどうかは分からないが、まずはノックだ。そんな雰囲気の中、頼星が突然眉間に皺を寄せた。



「あのさ……一つ質問があるんだけど。」

「え、何?」



 平然と尋ねる雪那に、頼星は眉間の皺を深くした。“もしかしてこいつ、何も分かってないんじゃ……いや、そんな筈ないよな。”短時間に、彼の脳内を二つの思いがぐるぐると巡る。

 やがて頼星は小さく息をつき、雪那をジッと見つめた。秋の風が、二人の髪をそっと撫でていった時。雪那より約10センチ程背の高い頼星が、そろそろと口を開いた。



「……S.S.G.ってさ、男しか入れないんじゃなかったっけ?お前、どうすんの?」
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