空のギター
「スゲーな光夜!!前の学校では部長やってたんだよな?」

「俺と交代するかぁ?ま、譲んないけど!」

「かっこいいー!みんなの刺激にもなって良いわね!!」



 他の部員達も、彼に触発されて次々と的に向かい出す。光夜はその様子を見ながら、以前通っていた学校のことを思い出していた。

 前の学校は施設の近くの、全校生徒がそれ程多くない小さな高校だった。光夜は、年の順からして自分が部長を任されていたのだと思っていた。だから、今の部活仲間に誉められるのは何だか不思議な気持ちだった。

 部活動は辺りが暗くなるまで続き、部員達はクタクタになりながら帰宅の準備を始める。友達に「また明日」と別れを告げ、光夜は一人暮らしの我が家へと帰ってきた。



「ただいまー……って、誰も居ないんだった……」



 施設暮らしをしていた頃は、学校から帰ると小さな兄弟姉妹達や先生からの温かい「お帰り」があった。だが、今はそれがない。賑やかな笑い声も懐かしい空気も、ここには全く見当たらないのである。

 光夜は無性に寂しい気持ちになり、しばらく玄関に突っ立っていた。やがてハッと気付くと、靴を脱いで部屋へと上がった。
< 91 / 368 >

この作品をシェア

pagetop