私の王様

「ば、ばかってなによ」

「ばかだろ。今日は俺が勝手に迎えに行って勝手におまえを連れまわしてんだぞ?だからおまえがそんなこと気にするんじゃねぇよ」

「そ、そっか」

それもそうだ‥って、え、自分勝手の自覚、あったんだ‥

妙に感心してしまったけど、自覚してるくせにえらそうなのはやっぱり東大寺斎らしいかも。

「それと、いい加減フルネームで呼ぶのやめろよ」

「じゃあ、東大寺さん?」

「‥‥おまえ、それ親父たち呼ぶのと一緒だろ」

まぁ、確かに。
紛らわしい気がしなくもない。

「‥‥斎さん?」
「斎」

呼べ、と暗に言われているのはわかる。

が。

天下の東大寺家の御曹司を、呼び捨てにしろと?

いや、今までも呼び捨ててたけどね?
今さらなのはわかってるけど、ちょっと抵抗が‥

「藤子」
「‥‥いつき」

降参してしぶしぶ私が呼んだ瞬間、彼が笑った。

ちょっと恥ずかしそうで、でも、すごく嬉しそうに。

「‥‥ッ」

顔が熱い。真っ赤になってるのがわかって、俯く。

なんで、私こんなに赤くなってるんだろう?

ただ、東大寺‥斎が、笑ってくれたのがちょっと嬉しかっただけなのに。

いつも口喧嘩ばっかりしてたのに、私が名前を呼んだだけではにかむみたいに笑ってくれたことが。
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