俺様上司は、極上の男!?
「太刀川とあんなかたちで関係を持って、構っているうちに、調子に乗ってしまった。太刀川が笑うたび、泣くたび、心が動いた。おまえを好きになって、俺も人並みに幸せになれるかもと幻想を抱いてしまった。……でも俺にそんな資格はない。そう思い出した」


「意味がわかんない……です」


私の声は涙声になっていた。
理解できない理由で、彼が私を遠ざけようとしている。
私を好きだと言ったその口で、私を拒絶しようとしている。


「わかんないよな。すまない。本当に申し訳なく思う。でも、おまえと付き合うわけにはいかない。昨日と……今までのことは忘れてほしい」


「そんなの……」


ひどい。
できるわけない。

だって、私は櫟課長のことが好き。

もう気付いてしまったのに……。



「本当にすまない」


櫟課長は私に向かって深く一礼した。
彼なりの最上級の侘びであり、そして私の想いへの隔絶だった。
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