腹黒王子の取扱説明書
「同じ総務部だよね。それに中山さんは杏子と親しいし、いろいろと仕事をする面でも円滑に事が運ぶと思って。中山さんを助けてあげてくれるかな。しばらくは他の社員のやっかみもあると思う」

俺の地位や金目当てで俺の秘書になりたがる女性社員は多い。

そういう打算的な女が側にいるのが嫌であえて須崎を秘書に据えたが、須崎にはもっと外部に働きかける仕事をさせたい。

現在、うちの会社は急激な円安で輸出関連が好調だが、また円高に転じれば業績がどうなるかわからない。

中国との関係は政治的に悪化してきているし、現在うちの四割を占める中国の生産ラインを三年以内にインドネシアにシフトしていくには、須崎にもっと動いてもらう必要がある。

須崎はアメリカ支社で一緒に仕事をしたが、とても有能な男だ。

調査能力に長けているし、交渉も相手の懐に入って自分の思い通りに事を進める。

アメリカに置いておくには惜しくて、日本に連れてきた。

「優しい上司みたいな言い回しだけど、……今、社長が千田部長を呼んだ事と何か関係があるの?」

杏子が俺を見る表情は険しい。
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