腹黒王子の取扱説明書
俺は彼女にはかなり信用されていないらしい。

千田部長の件は、今朝社長である父に話していた。

あのハゲは、須崎に調べさせたところによると、会社から社員に出される香典費用なども着服していたらしい。

総額四十万程度だが、犯罪には違いない。

父も憤慨していたし、近いうちに懲戒解雇になるだろう。

「まだオフレコだけど、千田部長は近く懲戒解雇になるだろう。会社の金を着服していたし、部下に自分の仕事まで押し付ける上司を放っておくわけにはいかないだろう?杏子も知っていたはずだよね?千田部長は中山さんに自分の仕事をさせていた。ずっとこのままでいれば、中山さんはまた倒れるよ」

杏子だって実情は知っているはずだ。

こう言えば、もう深くは追及しないだろう。

「あくまでも今回の人事は麗奈のためって言い張る訳ね?」

杏子は疑わしげに俺の瞳を覗き込む。

だが、俺は怯まなかった。

「他にも理由はあるけど、彼女のためでもあるよ」

嘘は言わない。

ある程度本当の事を伝える。
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