腹黒王子の取扱説明書
「そんなの私の方から願い下げです。あんな腹黒王子の嫁なんかになりたくありません」

「それは面白いな。じゃあ、適当でいいじゃねえか」

須崎さんはそう言って私を見下すような視線を向けたけど、何を適当にしたらいいのかもわからない。

須崎さんてよくわからない。

「麗奈、聞いてる?」

突然名前を呼ばれ、私はハッと我に返る。

いけない。申し送り中だった。

「はい、聞いてます」

「それから朝のメール見ればわかると思うけど、今日の十九時からロンドン支社の社長とテレビ会議することになったから、食事も三人分何か準備しといて」

うっ、まだ見てないの知ってて言ってるよね?

今日は秘書室のお茶当番でメール全部見る余裕なんてなかった。

役職のある人はノートパソコンもあるし、携帯でどこでもメールを見れるけど、私のような平社員は会社でしか仕事関係のメールもファイルも見れない。
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