腹黒王子の取扱説明書
俺はあんな状態だったし、帰ろうと思えばいつでも帰れたはずだ。

彼女だってまだ風邪が完治したわけでもないのに。

ベッドにも入らずこんな寝方をすれば風邪が悪化するかもしれないだろ。

起きたら説教でもしようか……と考えていると、視界に映る麗奈の髪が気になった。

思わず触れたくなる絹の糸のような綺麗な麗奈の髪。

手を伸ばして彼女の髪に触れようとすると、彼女が身じろぎして眠そうに目を開けた。

「う~ん……」

麗奈は目を擦りながら身を起こし、数秒ボーッとする。

観察していると、ちょっと面白い。

多分、自分が今いる場所を認識していないのだろう。

俺と目が合うとハッとした表情になり、いきなり俺の額に触れてきた。

「あっ、良かった。熱下がってる」

麗奈がホッとした顔になる。
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