腹黒王子の取扱説明書
「何ですか?」

まだ何かあるの?もう時間がないんだから早く行ってよ。

思わず眉間に皺がよる。

「まだ咳たまにしてるし、医務室行っといで。上司命令だよ」

俊は私の眉間にピッと指を当てると、フッと微笑してドアの向こうに消えた。

「……急に優しくするのは反則だよ……もう!」

私は眉間を押さえしゃがみ込む。

我が儘と思えば、急に優しくなるし……こっちがドキドキしてどうしていいかわからない。
私の心臓が持たない。

俊の処理した書類を持って秘書室に戻ると、社長が一人中にいてカレンダーをじっと眺めていた。

「杏子さんなら今応接室の準備で席を外してますが」

にっこり笑って声をかけると、社長は私に向かって目を細めて微笑む。

そう、このフロアには長谷部が三人いて紛らわしいので杏子の事は下の名前で業務中も呼んでいる。

社長は俊くらい背も高くて、ハンサムでダンディーなおじ様だ。
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