腹黒王子の取扱説明書
社長がいなくなると私はフウーっと溜め息をつく。

「……なんか、まだ朝の九時過ぎなのにどっと疲れた。栄養ドリンク欲しい」

「何おじさんみたいな事言ってるの?」

杏子が秘書室に戻るなり、クスクス笑う。

……誰もいないと思ってたのに聞かれていたらしい。

「それで、社長が来てたでしょう?式の日取りはいつ?」

「……なんで杏子が知ってるの?」

「昨日、兄が社長室で、それはにこやかに麗奈と結婚するって報告してたわよ」

「……あの腹黒男」

私はぎゅっと拳を握り締める。

「え?」

「ううん、こっちの話。恋人でもないのに何考えてるんだろう?」

「それは麗奈の見解よね?兄はすっかりあんたの事、婚約者扱いしてるわよ。いいじゃない、結婚しちゃえば」

「簡単に言わないでよ。私、弟が大学卒業するまでは絶対結婚しません」

「あら、でも海里君だっけ?兄がうちの顧問の弁護士事務所紹介するって言ってたわよ。弁護士目指してるんでしょう?」
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