腹黒王子の取扱説明書
「海里は司法試験予備試験も始まってるんですよ。集中させないと……」

「大丈夫だよ。その程度の事で集中出来ないなら、弁護士になる資格はない。でも、海里はどんなに邪魔されたってきっと受かるよ。そういうタイプだ」

元々頭も良いし、姉の苦労も知ってるし……麗奈をがっかりさせる訳がない。

麗奈に幸せになって欲しいと思う点では、俺と海里の意見が一致している。

海里と何度か食事をするうちに、お互いだいぶ打ち解けた話もするようになった。

「……ずいぶんと海里と親しくなったんですね」

麗奈が腕を組ながら、目を細めて俺を見据える。

彼女は俺と海里が仲良くなるのをよく思ってはいない。

俺と海里が結託して何かをするのを警戒している。

「俺にちょっと似てるんだよね。そんな事より、もう観念してうちに引っ越してくれば?」

「何で上司の家に引っ越すんですか?」

麗奈が冷静に反論する。
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