腹黒王子の取扱説明書
お金持ちだし、顔も良くて、仕事も出来る。その上、性格もいいとなればまあ当然だろう。

「まあ、普通ね。平穏無事ってとこかしら。あの人、完璧過ぎてちょっと苦手なのよね」

杏子が眉をしかめる。

「完璧過ぎって…贅沢な悩みじゃない?」

「いつもニコニコしてて気持ち悪いのよね。兄って言っても母親が違うし、今は一緒に住んでもいないし、従兄に近いわね。まあ、干渉してこないのは嬉しいけど」

杏子がフッと微笑する。

杏子の家も結構複雑なのだろうか?

そんな事を考えていると、社食の入口の方が急に騒がしくなった。

え? 何?

入口の方に目を向けると、噂していた彼が男性秘書と一緒にいた。

秘書の人の名前は須崎隼人。あの人も専務と同じニューヨーク支社からこの四月に異動してきた。背は専務よりも高くてがっしりしている。精悍な顔立ちで、専務ほどではないけど女性社員に人気がある。
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