腹黒王子の取扱説明書
「せ、先生、注射一本打てば元気になりませんか?」

私はすがるような思いで先生を見る。

「そんな特効薬あれば、俺が使ってるな。身体が休みたいって言ってるんだよ。働きすぎなんじゃないかな?君一人に仕事が集中してない?必要があれば相談にのるし、産業医として一筆書くけど」

先生が私に向かって優しく微笑む。

仕事の負担……。

私に集中してるとは思うけど、あのハゲ部長に言ったところで何も変わらない。

変な仕事をまた回されて、もっと仕事がやりにくくなるだけだ。

私が考え込むと、ノックの音がした。

先生が返事をすると、杏子がビニール袋を手に持って現れた。

「……前田先輩?」

杏子が先生を見て驚く。

「ああ、杏子ちゃんもここで働いてるのか」

先生が杏子を見て破顔する。

「ええ。兄には会ったんですよね?」
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