腹黒王子の取扱説明書
「ああ。杏子ちゃんは彼女に用があって来たのか?」

先生がチラリと私の方に目を向ける。

「兄に頼まれて買ってきたんだけど……。麗奈、プリンとかゼリー食べられる?」

杏子がビニール袋の中身を私に見せる。

「…食欲はないけど、それなら食べられそう」

私が力なく笑うと、杏子は私の右手にチューブタイプのゼリーを乗せる。
「これだけでもしっかり食べなさい」

「ありがと」

私がゼリーの蓋を開けて口に運ぶと、杏子は私を眺めながら悪戯っぽく笑った。

「兄とあなたの事、会社中に知れ渡ってるわよ。どう、お姫様抱っこされた感想は?」

「やめてよ。ますます食欲なくす……」

私は杏子を上目遣いに睨み付ける。

みんながどう噂しているか、だいたい想像はつく。

専務はうちの女性社員の憧れの的。
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