腹黒王子の取扱説明書
はっと振り向けば、トレーを持った専務が立っていた。

「あっ……」

どこから聞かれてたんだろう?

専務はテーブルにトレイを置くと、私の隣の席に座った。

「こたつは確かに家にないけど、鍋は好きだよ。今度、杏子と一緒に鍋でも食べに行く?」

専務が私に向かって優しく微笑む。

「ははっ……」

私は乾いた笑いを浮かべる。

この人、結構罪作りだよね。

社交辞令なんだろうけど、そんな誘い本気にしたらどう責任取ってくれるんだろう。

「ところで、杏子。いつになったら、お友達を紹介してくれるの?」

専務が杏子に優しい視線を向ける。

「私と同期の総務課の中山麗奈よ」

杏子が飲んでいたコーヒーをソーサーに戻し、専務の顔をじっと見た。
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