腹黒王子の取扱説明書
「ちょっと下がったかな」

顔が急接近してドキンとした。

私を見つめるその目は何故か優しい。

な、なんでこんな恥ずかしい事、涼しい顔で出来るの?

私が驚いているのに専務はクスッと笑いながら私の首から鎖骨へと手で触れる。

私はビクビク震えているのに、彼は私の反応を見て面白がっていた。

「結構、汗かいたね。着替えを持って来るから」

専務はにっこり笑って部屋を出ていく。

今の誰ですか?

本当に専務?

朝と全然態度が違うんだけど……。

サイドテーブルの上のノートパソコンを見てふと思い出す。

あっ、そう言えば仕事。

あの仕事、今日中に終わらせないと……。

顔面蒼白になる。

あのグータラな千田部長が気を利かせてやってくれてる可能性はゼロに近い。
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