俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜
「俺が言ってもムリですよ!逆撫でさせるだけです。」

「じゃあ、その方法でやってみよっか!」

「は?」

「あまのじゃく法だよ。」

「…できっかなぁ?俺、人騙せないから…」

「違うだろ。真面目すぎるんだよ…クソが付くくらい。」

「…それ、あまのじゃく法の手本ですか?」

「そう聞こえたか?」

「じゃあ、俺は、クソ真面目で良いってことだ。」

「おまえの性格じゃあ、“いい加減になれ”って言ったら、不真面目を真面目に演じそうだもんなぁ。」

「そうっすね。それって、よっぽど疲れそうですね。普通に真面目してた方がイイっす。」

「そんな感じで、宜しく頼むわぁ。」


慶太のことを相談しながら、
卒業していった生徒にも、何気なく、遠回しに喝を入れるコーチを
改めて尊敬する思いの駿祐だった。


(この人は高校の時もこんな感じだったなぁ。あの頃は、この言い草に腹をたてて、がむしゃらに取り組んでたけど、こんな意図があったなんて、全然気がつかず操られてたってワケかぁ。必死だったからな〜俺。)


こんなに身近に、素晴らしいコーチングの見本が居たのかと、

そして、騙されたと思って、
もう一度、真剣に代表を目指し、
このあまのじゃく法の成果を、
自分自身で試してみようと考えている自分が居た。



その前に…

その恩師に応えるつもりで、
駿祐の足は、久しぶりに実家へと向けられた。
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