俺の言い訳×アイツの言い分〜あの海で君と〜
「そんなつもりは!」

「うそだって!でも、ちょっと気になったから…後追っちゃった。」

「…」

「地元なんだよね?送るよ!」

「え、大丈夫です。」

「つか、送らせて!さっきはホラ、あんま話できなかったし…家が知られたくないならどっかで…なんか買って歩きながら話すってのは…どう?」

「…ふふふっ。はい。」


琴乃は頷き、やがてふたりは、テイクアウトのショップを見定めながら歩きはじめた。


「やっぱ、無難なとこで、ここかな?」



そして、ストローをくわえながら、店をあとにして間もなく、

前から来る、見慣れた制服の集団の威圧感に、ふと目を向けた琴乃は、
一瞬にして、その中に慶太の姿を見付けたのだった。


すると自然に足が止まり、
同じく気がついた慶太と目が合うと
とっさにそらして、その場を過ぎ去った。


何度も振り返りそうになる自分を、必死に抑えながら…


(何してんだろ私。別に疾しいことしてるわけじゃないじゃん!)


心の中で、自分に言い聞かせている琴乃でさえも、
何がそんなに気になるのか、分かってはいなかった。


駿祐と別れたばかりなのに、他の男性とふたりで居るところを見られたことに焦っているのか?
その見られた相手が、駿祐の“弟”の慶太だったことにか?
それを“慶太”は、どう思ったかって事になのか?


とにかく、それからの彼との会話など、何も覚えて無かった。
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