恋愛喫茶店 ~罪と一緒にスイーツを~
砂糖とバターたっぷりのマドレーヌ
プロローグ(あかり)
「ひのもとさん、ひのもとさーん。」
遠くから、多分わたしのことを呼んでいるような声がする。
「…何ですか?」
うざったいなと思いながら、振り向いて返事をした。
「新しく入った斉藤です。よろしく。」
振り向いた先には、背の高い男の人が立っていた。
目線を上にやると、人当たりの良さそうなニコニコ顔が、じっとわたしを見ている。
「どうも、よろしく。」
すぐに目をそらして、そっけなく返事する。『話は終わり』の合図だ。
「あの、今から何やれば?」
それを無視するように、斉藤君はまた話しかけてくる。
「じゃあ、倉庫整理してきて。わたしの手伝いは別にしなくていいから。」
突き放すように言ったのが、斉藤君にも伝わったのか、はいと小さく返事をして、倉庫に向かおうとする。