恋愛喫茶店 ~罪と一緒にスイーツを~
アンテナ(ケンイチ)
「どうも、新しく入った斉藤です。よろしくお願いします。」
「いや~、若い子が入ってくれると助かるわぁ。こちらこそ、どうぞよろしく。わからな
いことがあれば、何でも聞いてね。」
このお決まりのやり取りも15回目。
なぜなら、色んな人が、この倉庫にやってくるからだ。
店の裏側にある、この巨大な倉庫には、食料品から日用品まで、多くの物が入っている。
そして、その広い広い倉庫で、1人ぽつんと倉庫の整理をしている自分。
「さっきの人は、野菜担当の山下さんか。その前が田村さんで、その前が……」
指折り数えながら、思い出そうとしたけれど、結局ほとんど思い出すことができなかった。
「ま、いいか。名札もあるし、ゆっくり覚えていこう。」
1人言を言いながら、倉庫整理をまた始める。
ヒマで退屈だけど、入ったばかりの新人バイトは、倉庫整理から始めるのが、この店の方針らしい。
「その前は、お酒担当の野村さん。さらにその前は、レジの森さんだよ。」
倉庫の奥の方から声が聞こえてきた。びっくりしすぎて、声が出ない。