食人姫
しばらくして、哲也が布団を抱えて戻って来た。


「直人と源太は隣で寝ろ。残りはこの部屋だ。ほら、行けよ」


布団を畳の上に置き、隣の部屋を指差して見せる哲也。


この夜道を、今すぐ帰れと言わなかった所に最低限の優しさを感じるな。


普段なら、怒り狂っていたら問答無用で放り出しているだろうけど。


やはり、あんな化け物がうろついているとなると、哲也も無茶な事は言わないんだな。


「はいはい、じゃあ行こうか源太。僕達は明日に備えて寝よう」


「あ、う、うん……」


そうして、直人と源太は部屋を出て行った。


出来れば協力して欲しかったけど、さすがに人の命が……ともすれば、自分の命が懸っているとなれば、無理も言えないよな。


「チッ!裏切り者どもがよ」


哲也は……そうは思ってないみたいだけど。


「でもさ、本当にどうするつもり?谷から逃げるってのもダメだったら、どうしようもなくない?他に方法は……」


由奈が頭を抱えて考えているようだったけど、哲也には何か考えがあるようで。


俺の顔をジッと見詰めて、ニヤッと不気味な笑みを浮かべたのだ。







「大輔、お前……麻里絵とやっちまえよ」
< 125 / 272 >

この作品をシェア

pagetop