食人姫
それからしばらく、俺は儀式と麻里絵の事を考えていた。


哲也はその風貌に似合わず、化け物達に怯えていたけど……それも、時間と共に解消されていった。


一体、また一体と、ここにいても俺達を食う事は出来ないと理解したのか、小屋からいなくなって。


最後の一体が姿を消してようやく哲也も安心したのか、仰向けに倒れるように横になった。


「マジで生きた心地がしなかったぜ。平然としてられる大輔はすげぇわ」


「……麻里絵も、今そんな感じなのかな。生きてるけど、死を覚悟するってのはさ」


大人からも、麻里絵からも儀式の内容を聞けなかった。


儀式が行われてからでは、麻里絵が死ぬから手遅れになるのに。


「わかんねぇ」


哲也の返事はただそれだけ。


熱い言葉を並べるかなとか思ったけど、そうじゃない事が事態の深刻さを表しているように思える。


「……まあ、でもよ。今日、大輔も俺も死んだ。そう思えば、何だって出来るんじゃね?助かったのは運が良かったみたいなもんだしな」


そう言って哲也が、木箱を手に取り、ぼんやりと眺める。


結局俺達は、前回の巫女に命を救われた。


今回も谷の人間の命を救ってくれるだろう。


儀式が……行われれば。
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