食人姫
シャン、シャンという鈴の実が生ったような棒をもった村人を先頭に、神輿に乗った幼馴染の麻里絵が10人程の村人に担がれて、この村の神社に向かっている。


まだ少し幼さが残る小さな顔は、俺が初めて見る化粧で綺麗になっていて、まるで女神でも見ているかのような錯覚を覚えた。


「……話すなら、今しかねえぞ。鳥居をくぐったら儀式に入るからな」


俺の横を通りかかった神輿は止まる気配はない。


少し前から麻里絵は俺を見付けていたのか、不安そうに微笑んで、小さく口を開いた。


声は聞こえない。


だけど、麻里絵が何を言ったかは分かったような気がした。












「ごめんね」













そうだと理解した瞬間、俺は神輿に向かって駆け出した。


「謝るくらいなら死を選ぶな!!谷がどうなっても俺と一緒にいるって言えよ!!」


そう叫んで、俺は警護と呼ばれる巫女の護衛に取り抑えられて、道路に押さえ付けられた。


「大輔!それ以上言うな!あまり変な事を言うと、何をされるかわからないぞ!」


耳元でそう囁いたのは……父さんだった。


「何でだよ……俺が頼りないからかよ。俺じゃあ、何も出来ないと思ってんのかよ!!」


麻里絵に頼ってもらえなかった悔しさから、俺は拳を地面に打ち付けた。
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