海までの道 ~あなたと私の距離~


彼女には大切な仕事があった。


それは夢を叶えるためのチャンスだった。


休むわけにはいかない。


このチャンスを逃すわけにはいかなかった。


他の人には任せられない。


今、今、私にすべきことは…


航太は怒った。


生命を君は、君の都合で絶つというのか。


授かった生命を育む気持ちはないのか。と…


それでも彼女は言った。


「今、今だからダメなの…今じゃなければ…」


「俺が責任を持つ。だから結婚しよう。子どもも産んでくれ」


それでも彼女は言った。


「なんで今なの。責任を持つって?私の夢にまであなたは責任をもってくれるというの」


「そんな冷たい女だとは思わなかった。勝手にしろ…」


航太はそれだけ言い、彼女が何か言おうとしていたのも聞かず別れた。


二人は別々の道を歩むことになった。
< 211 / 236 >

この作品をシェア

pagetop