海までの道 ~あなたと私の距離~
彼女がなぜ、そんな決断をしたのかわからない。
腹がたち、彼女への愛情さえも不信感にかわっていった。
俺のことを愛してくれていたんじゃないのか。
誰も信じられなくなった。
自分自身さえも。
「でも、和奏と会ってまた人を愛する気持ちを持つことできた。
愛し、愛される安心感や喜びを取り戻せたような気がしたんだ。」
航太の声はいつの間にか涙声になっていた。
「わかったような気がするんだ」
つないだ手をおでこにのせ、涙を隠すようにポツリと言った。
「あいつも俺と同じ気持ちだったんだよな。本当は母親になりたかった。でも、あの時は…。あいつが一番悩んで苦しかったのに、俺一人が辛いと思っていた。何でわかってやれなかったんだろう。それになんてこと言っちゃたんだ。何で俺、あいつの手を離しちゃったんだろう。」