【完】山崎さんちのすすむくん


……なんて、なんか恥ずかし過ぎて言えんけども。


だってええ年してこない年下の餓鬼んちょにそんな情けないこと言えんやろ?


うん、言えん。


「ま、俺のことはほんま気にせんでえーねん。それよか、お前さんこそあんなとこおったってことはなんや色々考えとったんちゃうんか?」


口を尖らし額を擦る夕美に、話を逸らしつつもふと気になったことを問いかけてみれば、その瞳が分かりやすく揺らぐ。


そんな素直な反応が可愛らしくて、俺はつい目を細めた。


けれど目を伏せ、陰りを帯びた夕美の表情に直ぐ様頬を引き締める。


「……私、ここに来てもうすぐ三ヶ月ですよね。……烝さん、私、何か可笑しいと思いませんか?」


いつもとは違う、含みを持たせたような言葉に、僅かに眉が寄った。


何かが……可笑しい……?


意味がよくわからず、その怯えすら滲ませて見える顔を見つめる。


そしてそのまま視線を全体へと這わしていく。


んー……特にこれと言って可笑しな所は無いように思うけど……。


小首を傾げる俺に、夕美はおもむろに前髪をさらりと梳いた。


「……髪の毛が、伸びないんです」


小さく吐き出されたその言葉に漸くはっとする。


そう言われれば確かに初めて見た頃と変わらない。髪なんて切れば短くなるしと、気にも止めていなかったけれど。


……確かに可笑しい、普通やったらありえへん。


落ち着かないのか、夕美は畳を見つめたまま何度も前髪を梳き続ける。


「髪だけじゃないんです。その……烝さんに言うのはちょっとあれですけど……女の子の日も…ずっと来なくて…」
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