【完】山崎さんちのすすむくん
このまま何もなければいいのにと心の底で密かに願い、手早く変装を解くと報告の為に屯所へと戻った。
勿論それが終わってもやることは多くある。
監察方の任がある日も然ることながら、それ以外にも隊医としての仕事だったり薬を作ったり助勤としての雑務だったりと、まあ多岐にわたる。
いざ自分が助勤になると、永倉原田両人のずぼらさが前にも増して目につく上に、沖田くんの補佐もある。
とりあえず、一日の終わりには割りとぐったりなのだ。
「……歳かな」
僅かに温くなった湯に浸かり、ぽそりと呟いた言葉が湯気で白んだ浴室内に響く。
町まで出なくても風呂に入れるというのは、やはり便利だった。
「なんでぇ山崎、精をつけるもんでも食いにくかー?」
……のびのび出けへんのが玉に瑕(キズ)やけどな。
豪快に湯船に入ってきた永倉くんにのし掛かられるようにして肩を組まれる。
「お、いいねぇ俺もそろそろパアッといきてーとこだったんだよな」
反対側からは原田くんがこれまた豪快に水面を揺らし近付いてくる。
巨人どもめ。
「遠慮しておきます」
自分等みたいな酒癖悪いんとはあんま出掛けたないし。
俺おもり決定やん。
「つれねぇこと言うなよ、平助が出てっちまって俺等も楽しく呑めてねぇんだよ、なぁ?」
「そうそう、あんま呑むと俺達だけじゃ帰れねぇからさぁ」
……やっぱしおもりやん。