マネー・ドール
 俺はもうガマンできなくて、真純の中に入ろうとしたけど、中は少し固くて、真純は、少し、痛そうにして、顔を歪めた。
「痛い?」
「うん……」
「大丈夫?」
「……ゆっくり、して……」
俺達は舌を絡ませ合いながら、唇と唾液を舐め合い、手を握り合って、ゆっくりと、少しずつ、一つになっていく。
「どう?」
「うん……いい……」
俺は段々速くなって、いつの間にか、真純の声は大きくなっていて、俺は息を弾ませながら、時々声を漏らしてしまっていて……
「慶太……」
「うん?」
「私ね……今ね……すごくね……幸せなの……」
「どう……して?」
「慶太にね……抱かれてるから……」
そう、俺は初めて、真純を心で抱いていた。きっと真純も、心で俺に抱かれている。俺達は初めて、本当の俺達を感じている。真純は俺の腕の中で、切ない声をあげて、俺はもう、感じすぎて……もうダメだ……早いかな……でも、もう……
「真純……もう……」
「うん……」
多分、それは俺の最短記録で、こんなに、セックスを感じたのは、初めてで……ちょっと、恥ずかしい……
「ごめん……早かったかな……」
「ううん」
ほっぺたも体も、ちょっと赤くなった真純は、クスクス笑って、俺はその笑顔がかわいくて、ちょっと照れくさくて、真純をきつく、抱きしめた。そこにいるのは、紛れもなく真純で、俺がずっと、ずっと欲しかった、真純だった。
「初めて、真純を抱いたよ」
真純は嬉しそうに笑って、子ネコのように俺の胸に丸まって、上目遣いに俺を見つめた。
「キス、して」
そんな……何度でもしてやるよ。
俺はキスを覚えたてのガキみたいに、真純の唇とかほっぺたとかおでことかに何度も何度もキスして、真純のおっぱいを触って、くすぐったいって笑う真純がもう、食べてしまいたいくらい、かわいくて、かわいくて、思わずほっぺたを噛んでしまった。
「もう。痛いよ」
「だって、かわいくて……」
「四十のオバサンだよ」
「四十だろうか六十だろうが、かわいいの」
「バッカみたい」
真純は笑って、舌ったらずにその口癖を言って、俺の脇腹の肉を摘まんだ。
「おにく」
「一緒にジム、行こうか」
俺も、真純の脇腹の肉を摘まんだ。
「うん」
俺達はクスクスと笑いあって、もう一回キスをして、俺はちょっと復活しかけたけど、真純はもう眠そうだったので、ガマンすることにした。
「何時?」
「もう三時だね」
「寝るか」
「うん」
俺達はオッサンとオバサンなので、体が冷えると良くないよね、と言って、パジャマを着て、ふわふわの靴下を履いて、スエットを着て、もう一回キスをして、おやすみっていったけど、やっぱり最後にもう一回キスをして、手を繋いだ。
「おやすみ、なさい……」
真純はそう言って、目を閉じた。すぐに寝息が聞こえて、俺はもう今日はこれで終わりとほっぺたにキスをして、おやすみ、と呟いた。真純の寝顔はやっぱりかわいくて、俺はなんとなく眠れなくて、しばらく真純の寝顔をつんつんしたり、耳の穴に指を入れてみたり、ちょっとおっぱいを触ってみたり、そのたびに、真純はうーん、って言ったけど、目は覚まさなくて、俺は真純を抱きしめて、二十年ごしの片思いを思い返して、もう、忘れ始めていた。
 そして、いつの間にか……目を閉じていた。

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