新訳 源氏物語

桐壷、慕う

私の身体を優しく揺する手は、一体誰の物なのであろうか。

自分のかもはっきりしないような曖昧な意識の中で考える。

果てしなく重い瞼をゆっくりと開けると、目の前には整った笑顔があった。

白く柔らかな両の手が、私の髪に触れ、男性にしては細めで繊細な印象を受ける指が撫でるように梳いていく。

ふと嬉しそうな表情との密接な距離へと意識が戻り、身体中の血液が一気に顔に集中する。
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