情熱のメロディ
バイオリンを手にとって控え室を出て、舞台袖へと向かう。アリアの足取りはしっかりとしていた。
カイが視界に入ったときも、アリアは動揺することなく彼に近づいた。緊張はしているのに、一方でとても冷静な自分もいる――不思議な気持ち。
「カイ様」
「……アリア」
アリアが呼びかけると、カイは少しビクッとして肩を震わせた。
タキシードを着て、真っ赤なバラを胸ポケットに挿したカイ。彼もまた、赤髪をきっちりとセットし、大人っぽく見える。こうして正装をすると、本当にヴォルフそっくりだ。
アリアが想いを寄せる人は、このフラメ王国の王子で次期国王――けれど、アリアと音楽を奏でるときは対等なパートナーであり、アリアの心にいるカイは1人の男性。
音楽室での練習も、服飾店やカフェ、中庭での甘く切ないデートや思い出も……全部、大切にしよう。
第一王子と新鋭のバイオリニストの登場を心待ちにする会場の喧騒が遠くに聴こえる。アリアは今からそんな人々の前で自分の想いを告白するのだ。
「今日の夢は、夢のままなのかもしれません」
唐突に話し始めたアリアに、カイは少し困惑した表情を浮かべたけれど、アリアは構わず続ける。
「でも、私は私の見た夢を奏でます。目が覚めたとき、それが夢のまま散ったことを知っても……私の現実は変わりません」
アリアが柔らかく微笑むと、カイはハッと息を呑み、弓を握る手に少し力を込めた。
カイが視界に入ったときも、アリアは動揺することなく彼に近づいた。緊張はしているのに、一方でとても冷静な自分もいる――不思議な気持ち。
「カイ様」
「……アリア」
アリアが呼びかけると、カイは少しビクッとして肩を震わせた。
タキシードを着て、真っ赤なバラを胸ポケットに挿したカイ。彼もまた、赤髪をきっちりとセットし、大人っぽく見える。こうして正装をすると、本当にヴォルフそっくりだ。
アリアが想いを寄せる人は、このフラメ王国の王子で次期国王――けれど、アリアと音楽を奏でるときは対等なパートナーであり、アリアの心にいるカイは1人の男性。
音楽室での練習も、服飾店やカフェ、中庭での甘く切ないデートや思い出も……全部、大切にしよう。
第一王子と新鋭のバイオリニストの登場を心待ちにする会場の喧騒が遠くに聴こえる。アリアは今からそんな人々の前で自分の想いを告白するのだ。
「今日の夢は、夢のままなのかもしれません」
唐突に話し始めたアリアに、カイは少し困惑した表情を浮かべたけれど、アリアは構わず続ける。
「でも、私は私の見た夢を奏でます。目が覚めたとき、それが夢のまま散ったことを知っても……私の現実は変わりません」
アリアが柔らかく微笑むと、カイはハッと息を呑み、弓を握る手に少し力を込めた。