情熱のメロディ
 「似合って、いるよ……とても、可愛くて、ふわふわして……遠くへ飛んでいってしまいそうだ」
 「そう、ですね……こんな色の、綺麗な空へ……飛んで行ってしまいたいです」

 カイがアリアを鳥籠に閉じ込めてくれないのなら――…

 でもきっと、どこへ行っても同じだろう。世界は空で繋がっていて、いくら遠くへ行ってもアリアの見ている空がカイの見ているそれと変わることはない。

 アリアが少し目を伏せたとき、広間から執事が出てきて2人を呼んだ。

 カイはアリアに手を差し出し、最後のエスコートを申し出る。今日の主役は、カイとアリア――フラメ王国第一王子とフラメ王国指折りのバイオリニスト、それ以上でもそれ以下でもないのだ。

 2人が広間へ入ると、大歓声が起こり、アリアは声を掛けてくれる人々にはにかみながらお礼を言い舞台へと上がった。

 司会進行をしている文化省の役人がアリアを紹介し、アリアは一歩前に出てお辞儀をした。

 「皆さん、今日はフラメ王国の音楽祭へお越しくださりありがとうございました。このような特別な舞台に立てたことを、とても光栄に思います。今日の演奏は――…」

 何度も練習してきた挨拶を人々は静かに聞いてくれた。アリアもすっきりとした気持ちで皆の前に立てている。何も、恥じることなどない。アリアは精一杯やったと、自信を持って言えるから……

 そうしてアリアの挨拶からカイの挨拶へ、文化省の大臣や議会の代表のスピーチも滞りなく終わり、皆が自由に交流する時間へと移っていく。

 食事と飲み物が用意され、皆それぞれに談笑を始める中、多くの人々が我先にとアリアとカイのもとへ押し寄せた。
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