異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「なごむ、だいぶ苦労してるね」

「……もう、帰りたい」


唯一の楽しみである食事だけど、いつもはフレイルさんたちの厳しいマナー指導がある。さすがに辟易して、3日に一度だけは好きに食べられる日をもうけてもらった。


大広間にあるやたらデカイテーブルやゲスト用の大食堂だと、なんか食べた気がしない。だから、下働き用のこじんまりした食堂を使わせてもらってる。


大半が何らかの石でできた壮麗な宮だけど、どこかよそよそしくて冷たい印象を受けるけど。下働き用の食堂は、基本が木造で土や藁なんかの素材が使われてる。なんだか温かみがあって好きだった。


ここだと身分関係なしにみんなとお喋りできて楽しい。あたしが(偽だけど)バルドの婚約者ってことで萎縮することなく、気軽に話してくれる。


もともとバルドは身分にこだわりがない主義らしいし、戦災孤児や身寄りのない人を引き取っては働いてもらってるらしい。だから、みんながバルドを大好きで尊敬を集めてる。


家族に近い、アットホームな雰囲気が心地よくて。ついつい長居しがちだけど気にしない。


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