異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「ええ……。相手は魔法大国である、セイレスティア王国ですから。かの魔術師を抑えるために、異端視していた魔術師や巫女を集めていたみたいなの。けれど、ヒトミは拒んだ。戦いによって命を奪う行為などしたくはないのだと……。
彼女は知っていたの。帝国が創世記に創られた封印されし禁断の兵器を用いて近隣諸国を滅ぼし、大陸を統一する野望を。
それは……ある血筋の巫女の力をもってのみ、作動させることができるもので。なんとしてもその野望を阻止したかったヒトミは、己の身体を逃がすことでそれを潰えさせようとしたのです」


あまりに壮大で意外過ぎる話に、本当におとぎ話か何かを聞いてるようにしか感じない。戦争だの兵器だの。現実味が無さすぎて、想像しろと言っても無理だ。


「あの……それじゃ。は、母が……逃げた先というのは……まさか」

「そう、日本です。和、あなたが生まれ育った国ね」


ライムおばあちゃんは何の迷いもなく、きっぱりと言い切った。


「もともと、ディアン帝国には大和の民がたびたび現れていたから、日本へ至るまでの“道”が、か細いながら繋がれていたの。ヒトミの力ならば、その道を使いたどり着くのは可能だった。
ただ……二度とこちらには戻れない、という前提はあったけれど」


< 226 / 877 >

この作品をシェア

pagetop