異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



「何か、あったの?」

「ほ、放っておいてください! あなたには関係ないでしょう」

「そうもいかんのだけどな~俺、女性に泣かれるの苦手なの」

「だったら、あたしがどこかに行きますから。どうぞ好きなだけ他の女性といちゃついてください」


灌木の太い枝を支えに立ち上がろうとしたけど、ズキッと鋭い痛みが走ってうずくまる。


「ほら、言わんこっちゃない。まだ動かしちゃあかんよ」


変わったしゃべり方をする男性は、あたしの背中に手を添えて何かに気付いたようだった。


「あんた、もしかすると剣やってんの?」

「……それが何か?」


グスッと鼻をすすってしまったけど、どうせ二度と会わない人だし。いろいろ失礼だから、構うもんかとヤケな気分になってた。


そういえば、涙を拭う時に手袋を脱いでたんだった。あたしの腕にも指にも、細かな傷があるし日焼けもしてる。訓練してるから筋肉もついてるし、よくこんな腕を晒してたなと自嘲した。


アイカさんの滑るようなきめ細かな真っ白い肌とは大違いだ。家事やアルバイトで荒れた上に、剣を握ったせいで豆だらけ。手のひらの皮も厚くなって、柔らかさには程遠い。


まるで、あたしそのものだ。がさつで全然女らしくない。こんな手をした女なんて、誰も好いてくれるはずない。


そう思うとまた、涙が込み上げてきた。


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