異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。




水瀬の巫女ということをアスカ妃に言い当てられた。当然ながら、あたしのさっきの行動でバレたんだろう。


帝国に帰る際に一番厄介だったのが、あたしが巫女と知られることだった。


自分の身の安全どうこうよりも、周りへの危険度が増すことが我慢ならない。


セイレム王国で起きた悲劇を繰り返さないためにも。出来るだけ隠した方が良いかと考えた。
だけど……。


今、ここにはアスカ妃の他にたくさんの臣下や国民が揃ってる。もしもの話だけど、アスカ妃が巫女を取り入れようとする、もしくは排除しようとする立場なら。あたしがハッキリと認めれば何らかの反応が返ってくるはず。


ここであたしが巫女だと宣言すれば、取り消しようがない。密室ならともかく、これだけたくさんの人の目があるんだ。ディアン帝国中枢部に話が伝わるのも時間の問題だろう。


“バルド皇子が巫女を婚約者にした”――と。


そうなれば、アスカ妃が一人であたしをどうこうは出来なくなる。ディアン帝国は公に水瀬の巫女を捜してきたんだから、個人的な私情で手出しは不可能になるだろう。


だからあたしはバルドにエークを進めてもらい、アスカ妃に向かって一番の笑顔を出した。


「はい、わたしが水瀬の巫女の秋月 和と申します。はじめまして、アスカ妃殿下」

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