異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



《我は、もはや疲れた。だが、人はいつまでも変わらぬ。今だとて欲望の虜となり、世界を我が物にせんとするモノがいる》

「……赤い霧……それの発生源がそうなのですね」

《そうだ。我の眠りを妨げ我の力を利用せんとの悪意を感じる。おそらく……》


【龍】が何かを語ろうとした瞬間、彼の思考と声がぶれた。それはテレビ映像にノイズが入ったようなもので、意志疎通に何らかの妨害が入ったことを意味する。


(“道”に、介入があった)


この“道”は、どんな科学技術だろうと魔術だろうと消すことは叶わない。世王の血筋たる水瀬の血が無ければ――


(ヒスイが言っていたもう一人の水瀬の仕業……だとすれば)


時間が、ない。


わたしは水瀬の血に目覚めつつあるけれど、おそらくもう一人の水瀬も同じ。それがこの妨害となって現れた。


しかも、もう一人の水瀬の意思はわたしと正反対――間違いなく【闇】と通じようとしている。


奴らの言いなりにその力をふるうとしたら、かなり厄介な相手になる。


(わたしが正当な水瀬の巫女だとみんなは言う。けれど……)


どうして、一人しかいないはずの巫女がこの時期に2人出るのか。そして、もう一人の巫女はいったい誰なのかを突き止める必要がある。


わたしは正体を探ろうとその力の源を探ろうとしたけれど。わたしの思念を感じたのか、ピタリと妨害は止んだ。


《わたしなりに決着を着けてあなたを眠りへと導きましょう。今しばらく目覚めは待っていてください》


わたしは【龍】にそう約束し、ひとまず封印の強化に成功して終えた。


(……でも、まだまだだ。【龍】の約束通りに平和にしておかなければ)


……覚悟は、決まった。


水瀬として、バルドの妃として【闇】と対決し奴らを駆逐することを。


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