異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。
第40関門~終わりにしよう



《ひとまず封印は解けずに済んだ。後は霧を祓えばよい》

《ええ、わかっている》


【龍】に短い眠りを与えた後、わたしは3つの神器を手にただ願う。帝都を中心に広がりつつある、忌まわしい霧の消滅を。


赤い霧はディアン帝国のみならず、この大陸と他の大陸……ひいては惑星全てを覆いつくす勢いだったけれど。


ヒスイの助けを借りてわたしは水瀬としての力を振るった途端、一瞬にして霧は消滅し夜のような闇は取り払われた。


その途中で膨大な思念や感情がわたしの中に流れ込む。わたしがわたしで居られなくなると怖くなったけれど。


わたしの左手首に存在する腕輪が、わたしが人であることを思い出させてくれた。


(バルド……)


あの、黄金色の鷹のような瞳に囚われた自分――秋月 和であると。彼の大きな包まれる愛情が、わたしがあたしである手助けをしてくれたんだ。


そして、彼と結ばれた愛の結晶であるもう一つのいのちも。あたしを留める抑止力となって。

“浄化の御技”――。


水瀬の巫女として初めて広範囲に渡る力を振るった反動は、身心ともに激しい消耗となって現れたけれど。あたしは後悔などしなかった。


やっと、皆の役に立てた。たくさんたくさん親切にしてもらい助けてもらったみんなに、恩返しにもならないけれど。大切な人たちの助けになったならこれほど嬉しいことはないんだ。


< 784 / 877 >

この作品をシェア

pagetop