異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



バルドは「ああ」と短く返した後に、あたしの手を握りしめてきた。痛くなるほどの力強さに、彼もそれだけ心配してくれたと嬉しくなる。


「とにかく、今は休め。一人の身体ではないのだからな」

「……うん。でも、婚約が発表されるまであと3日だよね。それまでに回復するように頑張る」


バルドが教えてくれたあたしと彼とに関わるスケジュール。皇族の妃になるなら、国の決定にきちんと従わなきゃ。

結婚する前からあまりにルーズだと、周囲に良くない印象を与えるかもしれない。


公的な人間は個人だけの都合であれこれ変えられない。特に健康は大切な問題。直接国の信頼にも関わるのだから、体調管理はいち個人の問題じゃなくなる。


国のトップに近い人間がしょっちゅう寝込んだりすれば、国民も不安になるし、周囲にも悪印象を与える上に判断力や信頼度がないと見なされ、影響力を軽視される。人より上の立場の人間になるなら、覚悟はしておかなきゃならない。


自分の一挙一動が国に直接関わり、影響力が段違いになるのだと。


そんな立場の人間が個人的な事情で決定されたスケジュールを変えるのは、わがままってレベルの話じゃなくなるんだ。


これだけのことを理解出来たのは、セリス王子やバルドをはじめとした王族皇族とセリナやユズのお妃様方と接してこられたから。


セイレム王国の貴重な経験は、あたしに様々なものを与えてくれた。


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