異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



内密に会う……とはいえ。密使は男性ということだから、2人きりで会うのはもちろん不味い。今あたしはバルドの婚約者で、彼の子どもがお腹にいるのだから。ミス·フレイルと護衛のロゼッタさんに同席してもらい、使者へ部屋に入ってもらった。


セイレスティア王国の軍服ではなく、一見その辺りにいる市民と変わらない服装。ディアン帝国の伝統的な衣装をアレンジした平服は、黒髪の彼にはよく似合ってる。


「ご無沙汰してましたね、ライベルト。遠路はるばるディアン帝国への旅路お疲れさまでした」

「あたたかいお言葉をありがとうございます」


あたしへ恭しく頭を下げるのはセイレスティア王国の近衛隊長であり、ティオンバルト王太子殿下の幼なじみであり片腕でもある側近のライベルト。


セイレスティア王国でもかなり重要な地位にある彼が、どうしていち使者としてこちらへ?

ただ伝言を伝えるだけならば、言霊の姫であるユズの力で封じ込めた品物を運び渡すだけでいいはず。


(ライベルト自体に役割があるから彼を寄越したとしか思えないけど……)


あたしはほうっ、と息を吐くと堅苦しい空気に嫌気がさした。


「……あまり堅苦しいのは苦手。ライベルト、もっと楽にして。あたしも遠慮なく力を抜くから」


そう言ってあたしは揃えた足を崩して、肩から力を抜く。ミス·フレイルが眉をひそめて咳払いをしてくるけど、構わない。非公式な謁見まで仰々しいのは息が詰まるんだよね。


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