異世界で帝国の皇子に出会ったら、トラブルに巻き込まれました。



わたしの一番初めの記憶は……見知らぬ部屋での目覚め。


ロゼッタさんがずっと付き添っていてくれたらしく、彼女は泣き笑いの顔で抱きしめてくれた。


あれから半年以上経つ。


わたしは、目覚める以前のことを何も思い出せない。本当に、何一つ。


そして、一番混乱したのは……自分が懐妊していたという事実。


受け入れるまでにどれだけ時間が掛かっただろう。誰かを愛した記憶もないのに、いきなり母親になれと。気が狂いそうになった。


でも……


自分のお腹で日々成長をしてゆく命を感じた時。驚くほどすんなりと受け入れることができた。


誰とどうして結ばれて懐妊したのか……それはもう考えない。今、ここにある命はわたししか守れない。ならば……わたしは護ろう。何があっても。そう決めれば、生きる希望も見えてきた。


わたしは、この子のために生きようと。



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