さよならさえ、嘘だというのなら

こちらからどう行動しようか考えていると

スマホが鳴り
公衆電話から電話が入る。

公衆電話?

「はい……」

『……颯大君?』
蚊の鳴くような小さな声
細く耳に響く声は凪子の声だった。

「須田?」

『颯大君。よかった電話番号が合っててよかった』

「今、どこ?ひとり?」
はやる気持ちを抑えながら
凪子に聞く。

チャランチャランと、凪子の声と共に金属音が聞こえる。
10円を落している音だろう。

自分を落ち着かせる為に深呼吸し。凪子に優しく語りかけた。

「今どこにいるの?」

『颯大君の声を最後に聞けてよかった』

「須田。どこにいる?」

『今までありがとう』

「凪子、だから今どこに……」

『さよなら』

かみ合わない会話と共に
凪子は受話器を下ろしたようだ。

公衆電話
10円の落ちる音
さようなら
最後……。


ドロン山だ
凪子はドロン山に居る。

あそこには公衆電話がひとつあり
ボランティアの人が10円玉を沢山置き
【命の電話サービス】の電話番号が書いてある。
ドロン山に入る前に、電話して欲しいという想いを込めていた。

この町に転校したのもドロン山が目的って言ってた。
ドロン山に行きたい
消えてしまいたい

そう彼女は言っていた。
凪子が山に入る前に

早く見つけないと。
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