さよならさえ、嘘だというのなら

「明日学校来るよね」

「行くよ」

「よかった」

七瀬はやっと笑顔になる。
可愛い笑顔だった。

「プルミルさんきゅ」

「栄養取ってね」

「お前の分は?飲んでないだろ」

「私はいいよ。プルミルより野菜ジュース飲んでるし」

「ゆるキャラのプルミンが泣くぞ」

「プルミン。商工会でスタンプ作るって知ってた?」

「あの可愛くないキャラで?」

ごく普通の七瀬との会話が懐かしい。

俺達は何も変わってないのに
普通の夏が
血と疑惑の夏となる。

「またね」

「うん」

七瀬は安心した顔を見せて家に帰り

俺はポケットに手を入れ
半分折れた凪子の携帯電話を握る。


もう
前の夏には戻れない。






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